フィリップス1世(在位:AD244年～AD249年)は史上初のアラビア出身皇帝であり、通称「フィリップス・アラブス」とも呼ばれます。

その治世中にローマ建国千年祭を盛大に催行したことで知られ、またキリスト教徒に対して寛容であったことから、後に「史上初のキリスト教徒皇帝」と伝承されました。

3世紀半ばのローマで製造されたアントニニアヌス銀貨

当時発行されていた銀貨は主にアントニニアヌス銀貨(=名目上2デナリウスの価値に相当)であり、それに比してデナリウス銀貨は種類が少なかった。銀の品位や重量から鑑みて、この時期のデナリウス銀貨は広く流通せず、特別な目的を有するコインとして貯蔵された可能性もある。

カリヌス帝(在位:AD283-AD285)は父のカルス帝と弟のヌメリアヌスがペルシア遠征に赴くのに際し、首都ローマの統治を一任された。しかし父帝と弟が遠征中に相次いで没すると、その跡を継いだディオクレティアヌスの軍によって攻められ、マルグス川での戦いに敗れその治世を終えた。

シリアの都市アンティオキアで製造されたアントニニアヌス銀貨

3世紀半ばに発行されたアントニニアヌス貨。ほとんど銀は含まれず、ほぼ銅成分によって造られている。

イタリア半島北部の都市ティキヌム(*現在のパヴィーア)で造られたアントニニアヌス貨

ゴルディアヌス3世(在位:AD238-AD244)はアフリカ属州で帝位を宣言し戦死したゴルディアヌス1世の孫であり、13歳で皇帝となった。後見人となったティメシテウス(*皇妃トランクィリナの父)の補佐により比較的安定した治世を実現したが、ペルシア遠征の途上で兵士たちの反乱に遭い殺害された。

3世紀半ば、軍人皇帝時代の古代ローマ帝国で発行されたアントニニアヌス銀貨

プロビデンティアは先見・予知を具現化した女神像であり、先見の明がローマ皇帝の欠くべからざる資質であることを示しています。

ローマ建国千年祭記念

通称「ガリア帝国」はローマの支配から自立した地方独立政権であり、ガリア、ゲルマニア、ブリタニア(現在のフランス、ドイツ西部、イギリス南部)を支配した。
初代皇帝となったポストゥムスはもともと下ゲルマニアの総督だったが反乱を起こし、現地駐留のローマ軍を取り込んで皇帝位を宣言した。

カッパドキアの名峰アルガエウス山(=エルジェス山,標高3,916m)の頂上部には輝く星があることから、当時の山岳信仰を象徴する意匠とみられます。

マクシミヌス帝はもともとトラキア出身の農民であり、兵士として出世した人物でした。その出自から「マクシミヌス・トラクス(トラキアのマクシミヌス)」と渾名されました。

ユーフラテス川上流の都市サモサタで造られたアントニニアヌス貨

コインの裏面には、戦勝トロフィーを担ぎながら球体(*世界=ローマ帝国の象徴)の上に乗る勝利の女神 ヴィクトリー(ウィクトリア)が表現され、足下には後手を縛られた二人のゲルマン人捕虜が座らされています。

副帝ヘレンニウス・エトルスクス―父帝トラヤヌス・デキウスの治世下に発行されたアントニニアヌス銀貨

バルビヌスは同じく元老院議員だったプピエヌスと共に皇帝に選出され、共同統治を行いました。しかし同僚であるはずのプピエヌスとは常に不仲であり、正常に統治を行うことが困難なほどでした。親衛隊をはじめとする軍人達は仲違いする両皇帝に見切りをつけ、二人を殺害し新しい皇帝を擁立します。

バルビヌスとプピエヌスによる共同統治はわずか3ヶ月に終わり、その短い治世に発行され現存するコインは大変貴重です。

対ゲルマン人戦勝記念タイプ

コイン全体には当時の銀鍍金が残されており、銀貨のように見せていたことが分かります。

このコインは3世紀半ば、ローマ帝国の属州の一つであったシリアで発行されました。当時のシリア属州都アンティオキアの造幣所で造られました。
ヘレンニウス・エトルスクス帝(クィントゥス・ヘレンニウス・エトルスクス・メッシウス・デキウス)は、デキウス帝(在位:AD249年～AD251年)の長男であり、AD251年に共同統治帝となりました。同年に行われたゴート族との戦いの最中に命を落とし、その直後に父デキウス帝も戦死しました。

パンノニア(*現在のハンガリー～セルビア)出身のデキウスは皇帝即位にあたり、偉大な先帝にあやかって「トラヤヌス・デキウス」と称した。