エーゲ海のロードス島で造られたドラクマ銀貨。表面には
太陽神ヘリオスの正面像、裏面には
バラの花が表現されています。バラの左側には、花の蜜に誘われた蝶が飛来しているのが確認できます。
ロードス島は太陽神ヘリオスに捧げられた島と云われ、この島中に咲き誇り、太陽神も気に入ったとされるバラの花が象徴とされます。英語名ではそのまま「ローズ島」とも呼ばれているほどです。
ヘレニズム時代、ロードス島はプトレマイオス朝エジプトなどの庇護を受けながら、エーゲ海貿易の拠点として大いに繁栄しました。
ヘリオス神と
バラを表現したロードス島のコインは各地で受け入れられ、ヘリオス神の美しい正面像から人気があります。
コインに表現されたヘリオス神は長髪の青年像として表現され、頭部には太陽を示す後光が加えられています。後にこの姿は「イエス・キリスト」のイメージと重ね合わされ、中世ヨーロッパでは「ユダがイエス・キリストを売った際に受け取った30枚の銀貨」の一枚として、聖遺物として持ち込まれることもありました。ドイツやイタリアの地方教会では、ヘリオス神のコインが宝物として大切に保管されていたという記録も残されています。
ロードス島のヘリオス神に対する思い入れは強く、世界七不思議にも数えられた「ロードスの巨象」は太陽神ヘリオスを表現したものでした。このコインが造られたと同時期のBC284年に完成したヘリオス像は、交易港の入り口を跨ぐようにして建てられ、灯台の役割も果たしたとされています。
ロードス島の巨大へリオス神 (想像図) 伝承によれば高さ50mにも及ぶ巨象であり、当時の世界でも最高建築のひとつでしたが、BC226年の大地震によって倒壊し、後にその残骸すら跡形も無く撤去されました。