紀元前1世紀初めのセレウコス朝シリアで発行されたテトラドラクマ銀貨。このコインが造られた都市セレウキアはセレウコス時代に建設された同名の諸都市の内の一つで、この場合は地中海沿岸の港湾都市を指します。
現在のトルコ領サマンダーにあたり、他の都市と区別するため「セレウキア・ペリア」と呼ばれました。
表面に打ち出された
テュケは幸運をもたらす運命の女神とされ、ローマでは「フォルトゥーナ」の名で伝わり永らく信仰されました。頭部に戴く冠は城壁を表しており、城塞都市セレウキアの守護女神であることを示しています。
古代ギリシャ・ローマで広く知られたテュケ(フォルトゥーナ)は人々に幸運をもたらす女神とされていました。一方で、移り気な性格でもあり、幸運を与える人間の性質を問わず、女神が気に入った人間に好機を与えることもあれば、気まぐれに奪い去ることもあるとされていました。その為、ローマ時代以降に表現されたフォルトゥーナ像は目隠しをされていたり、不安定なことを象徴する球に乗せられている例が見受けられます。