紀元前2世紀半ば当時のマケドニアは、第三次マケドニア戦争によってアンティゴノス朝が滅亡し、ローマによる支配下で四つの自治領に分割されていました。このコインは当時、マケドニアを統治していたローマの下で発行されました。デザインはヘレニズム期のギリシャ彫刻を思わせる様式ですが、銘文などにはローマの影響がみてとれます。
コインの表面には女神
アルテミスの美しい胸像が打ち出されています。月と狩猟の女神とされ、「ダイアナ」の名でも知られるアルテミスは、上の画像と同じく動きやすいように髪を結い、矢の入った矢筒を肩にかけています。
周囲に刻まれた星は
「ヴェルギナの星」と呼ばれ、古代マケドニアを象徴するものでした。これらの星は円に囲まれていることから、古代マケドニア王国軍の盾を表現していると考えられています。
表面の刻印は全体に下にずれており、完全な手作業によって打刻・製造されたことが分かります。この自然な打ち出しの具合から、当時の古代ギリシャ人の手技を感じられます。
コインの裏面には、オークのリースに囲まれた
ヘラクレスの棍棒が表現されています。
左端にはケラウノス(稲妻の武器、大神ゼウスの象徴)が刻まれています。上部には発行地マケドニアを示す
「ΜΑΚΕΔΟΝΩΝ」銘が刻まれています。