紀元前3世紀初頭にトラキア王 リシマコスが発行したこの銀貨には、理想化された
アレキサンダー大王(アレクサンドロス3世)の肖像が打ち出されています。側頭部にはエジプトの大神アモンを象徴する巻角が生やされ、亡き大王の神性を象徴しています。
このことは、同時期にプトレマイオスやデメトリオスが自身の肖像を刻ませたのとは対照的です。
神格化されたアレキサンダー大王の姿は、リシマコスと大王の関係を誇示し、自らの正統性を宣伝する意図があったとされています。リシマコスが発行したアレキサンダー大王のコインは、初期ヘレニズム様式を代表する、印象的で際立ったイメージとして古くから根強い人気があります。
側頭部に表現された巻角は、古代エジプトの大神アモンの象徴です。かつてアレキサンダー大王がエジプトを征服した際、当地の神官から「大王はアモン神の息子」という神託を授かったことに由来しており、神格化された大王を表現しています。
アレクサンドロス3世の胸像 裏面には知恵と戦術の女神アテナの坐像が表現されています。武装したアテナ女神は、手の上に勝利の女神ニケを乗せています。その左右には発行者を示す
「ΒΑΣΙΛΕΩΣ ΛΥΣΙΜΑΧΟΥ (王たるリシマコス)」の刻銘があります。