• ホノリウス帝/捕虜を踏みつける皇帝
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 ローマ帝国の東西分裂後、西ローマ帝国の初代皇帝となったホノリウス帝(在位:AD395年~AD423年)の時代に発行されたソリダス金貨。

 表面にはホノリウス帝の胸像、裏面には武装姿のホノリウス帝の立像が表現されています。右手で軍団記章を持ち、左手には球体(=世界を示す)を持っています。球体に乗った勝利の女神ヴィクトリーはホノリウス帝に月桂冠を授け、また足下には縛られた捕虜が皇帝によって足蹴にされていることから、皇帝の武勇を示すモティーフと考えられます。

 しかし実際のホノリウス帝は無能な君主としての評価しか残されていません。彼は父テオドシウス帝よりローマ帝国の西半分を継承しましたが、その後はゴート族など蛮族による侵入が相次ぎ、国内の疲弊が進みました。しかし皇帝は政務に無関心であり、宮廷をラヴェンナに移して以降は宮殿の警護を徹底して強化し、自らはペットの鶏と戯れて気を紛らわしたと伝えられます。
 蛮族によるローマ市破壊を許し、同市を事実上放棄したホノリウス帝は、ローマ帝国の滅亡を早めた暗愚な君主という不名誉な評価によってその名をローマ史に残しました。この金貨は、ホノリウス帝が宮廷をラヴェンナに移した後、当地の造幣所で造られたものです。


 

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