• メルカルト/イーグル
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 紀元前1世紀半ばのフェニキアで発行されたシェケル銀貨。発行都市ティール(ティルス)は、セレウコス朝シリアの支配下にあっても独自の貨幣を発行する権限を認められ、ローマの支配下に入ってからも継続されました。ティールのシェケル銀貨は4ドラクマの価値に相当し、フェニキアやパレスチナで広く流通しました。神殿への献納などに用いられた当時のシェケル銀貨は、新約聖書でユダがイエス・キリストを裏切って得た「30枚のシェケル銀貨」としても知られます。


 メルカルトはフェニキアをはじめ地中海東方地域で広く信奉されていた神です。大神バールの息子であり冥界の王とされ、海洋の支配者ともされていたメルカルトは、船乗りや商人達を中心に厚い信奉を集めていました。そのため様々な都市の守護神としても奉られ、多くの都市に神殿が建立されました。ギリシャ人やローマ人が地中海を制覇するようになると、メルカルトはヘラクレスと同一視され、その図像も似通ったものになりました。このコインに表現されたメルカルト像は、当時の一般的なヘラクレス像を模した姿になっています。


 

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