第一次世界大戦に敗れた後のドイツは経済的に不安定となり、国が発行する通貨の価値も暴落しました。各地では釣銭が不足し、この時期「ノートゲル」と呼ばれる地方発行の紙幣が数多く発行されました。ヴェストファーレン(ウェストファリア)で発行されたこのコインもその一種であり、緊急貨でありながらも美しい仕上がりとなっています。こうした紙幣やコインのバラエティは無数にあり、当時からドイツ国内では収集が行われていたようです。中には流通目的ではなく、完全に収集家向けに発行された「ご当地コイン」のようなメダリックコインも多く見られます。

　コインに表現されたハインリヒ・フリードリヒ・フォン・シュタイン(1757年～1831年)は19世紀初頭のプロイセン王国首相です。シュタインはナポレオンに敗れた祖国を立ち直らせる為、様々な改革を推進しました。彼の後任となったハルデンベルクの名と共に、ドイツの近代化を推し進めた偉人として知られ、1831年にヴェストファーレンの地で亡くなりました。