• アテナ神/フクロウ
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 紀元前4世紀の古代都市アテネで発行されたテトラドラクマ銀貨。当時より「フクロウ」の愛称で知られ、ギリシャ世界における貿易通貨として広く使用されました。

 表面には守護女神アテナの横顔像が打ち出されています。紀元前5世紀に発行されたアルカイック様式のアテナ神像と類似していますが、目の表現はより写実的になり、全体的に穏和な印象を受ける顔つきになっています。

 裏面にはアテナ神の聖鳥フクロウが表現されています。表面のアテナ神に対してフクロウの表現はやや稚拙になり、より線が太く荒くなった印象を受けます。

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                アテネのアクロポリスに建つパルテノン神殿

アテネのアクロポリスに聳え立つ「パルテノン神殿」は、訳すと「処女神の神殿」とされ、都市の守護神であるアテナに捧げられた神殿として建立されました。


 紀元前5世紀末のペロポネソス戦争に敗れたアテネはスパルタの支配を受け、ギリシャにおける絶対的な覇権を喪失しました。さらに紀元前4世紀半ば以降は同盟市戦争や神聖戦争など、他の都市との争いが絶えず、北部から進出したマケドニア王国によって圧迫され、衰退の一途を辿りました。

 紀元前4世紀以降発行されたフクロウコインは、銀の品位や重量に変わりはないものの、全盛期に発行された銀貨と比べると明らかに造型が崩れています。度重なる戦争によって支出が増大し、発行枚数が増加したため、銀を整形する手間が省かれた可能性があります。また、造幣所で働いていた彫刻師などの職人たちが戦地に駆り出されたため、技術の継承が未熟なまま増産体制に移行した可能性も考えられます。

 このフクロウコインは形状が歪であるが故に、両面の意匠もやや画面から外れています。しかしアテナ女神像の造型は同時代のものとしては大変美しく、比較的すっきりとした優しい顔立ちです。フクロウは頭部が際立って大きく表現されていますが、雛鳥のような愛嬌がある姿です。流通跡などの傷が無く、彫刻的な立体感も残されている美しい保存状態といえます。


 

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