• フェニキア テュケ女神/ニケ女神
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 紀元前1世紀初頭、フェニキア地方の都市アラドスで造られたテトラドラクマ銀貨。両面の打ち出し、盛り上がり共に大変良好な一枚です。裏面に表現されたニケ女神の小さな顔まで確認できる、良好な保存状態です。全体にかかったトーンが、2000年以上の歴史の流れを物語っています。

 表面に表現されたテュケは「運命」を司る幸運と機会の女神であり、ローマでは「フォルトゥーナ」の名で崇敬を集めました。古代ギリシャ・ローマで広く知られたテュケ(フォルトゥーナ)は人々に幸運をもたらす女神とされていました。一方で、移り気な性格でもあり、幸運を与える人間の性質を問わず、女神が気に入った人間に「好機」を与えることもあれば、気まぐれに奪い去ることもあるとされていました。その為、ローマ時代以降に表現されたフォルトゥーナ像は目隠しをされていたり、不安定なことを象徴する球に乗せられている例が見受けられます。

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 このコインに表現されたテュケ女神は、城塞風の特徴ある冠を戴いています。これはテュケ女神がコインを発行した都市の守護女神であることを示しており、またその役割を期待したものであると考えられています。城壁の冠を戴いたテュケ女神はフェニキア諸都市で発行されたコインの表面に多くみられ、フェニキア一帯ではテュケ女神を特に崇拝していたことが分かります。


 コインの裏面には、勝利の女神ニケが表現されています。背翼を広げたニケ女神は月桂樹のリースに囲まれています。このように裏面のデザインを月桂樹のリースで囲むスタイルは、紀元前2世紀~紀元前1世紀頃のヘレニズム期、小アジア~フェニキアの諸都市で発行されたコインに多く見られます。この様式はローマに征服される以前、各地の都市で広く流行していたとみられています。


 

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