19世紀～20世紀初頭のイギリスではコインの図柄をエナメルによって彩色し、ペンダントやブローチにする工芸品が流行しました。こうしたコインジュエリーは「ヴィクトリアン」と通称され、熟練の職人による繊細な作業によって、多種多様な作品が生み出されていました。現在では再現困難な、アンティークコインジュエリーです。

　使用しているコインは大英帝国の最盛期、ヴィクトリア朝時代の1シリング銀貨です。ヴィクトリア女王の在位50周年の節目に採用された新しい肖像が、淡い水色を背景として見事に浮き上がっています。
　裏面の連合王国紋章はイギリスを構成するイングランド、スコットランド、アイルランドの紋章から成り、それぞれに細かくエナメル彩色が施されています。周囲にはガーター勲章のガーターが配され、ラテン語によって「HONI SOIT QUI MAL Y PENSE (邪心あるものに災いあれ)」銘が記されています。ガーター勲章のモットーとして知られるこの一節は、ガーター部分を白色にすることでより明瞭になっています。

　色鮮やかにエナメル彩色されたヴィクトリア朝時代のコイン、当時の英国の職人による丁寧な手作業によって生み出された逸品です。