ユリア・ドムナ(AD170-AD217)はセプティミウス・セウェルス帝の皇妃であり、カラカラ帝、ゲタ帝の母親としても知られ、セウェルス朝の国母になった女性です。このコインは息子カラカラ帝の治世下に製造されました。
彼女はシリアの聖所エメサの祭司長の娘として生まれました。彼女がまだ若いとき、占星術師に「あなたは帝王天宮図という吉相下の生まれであり、帝王となる男性の妻になる」と予言されました。当時一軍人だったセプティミウス・セウェルスはこの話を聞きつけると、すぐさまユリア・ドムナに求婚し、自らの妻にしたと云われています。
裏面には
ウェスタ女神の立像が表現されています。頭にはヴェールを被り、貞潔さと厳粛さを象徴しています。左手で笏杖を携え、右手上にはパラディウム(*ウェスタ神殿の聖所に祀られていた木製のアテナ女神立像, トロイア戦争時にアエネアスが持ち出し、ローマにもたらされたと伝わる)を乗せています。
ウェスタは竃の守護女神から転じて家庭の守護神となり、古くからローマ人に信仰されてきた女神です。そして国家を大きな家族と捉えたローマ人によって「ローマ国家の守護女神」と認識され、ローマの中心部 フォルム・ロマヌムにはウェスタの神殿が建立されていました。6月9日は「ウェスタリア」と呼ばれる祝祭が催行され、竈に関連するパン屋や粉屋は祝休日となりました。
ウェスタの巫女たち ウェスタ神殿に据えられた「不滅の聖火」は、貞潔を重んじる処女の巫女たちによって大切に護られていました。
毎年3月1日に二本の枝を擦り合わせて火を起こし、新たな聖火を女神に捧げました。神殿は大神祇官=皇帝が管轄する重要な聖域とされ、巫女たちには様々な社会的特権と役割が与えられました。一方で神殿域内に居住し結婚が禁じられるなど、一生涯を神殿の管理に捧げるよう求めらました。生涯を通して男性との接触はほぼ禁じられ、不貞を犯した巫女は生き埋めの刑に処されたと云われています。