ネロ帝治世下の古代ローマ帝国で発行された4ドラクマ銀貨。このコインはシリア属州の首都アンティオキア(*現在のトルコ,アンタキヤ)で製造され、属州内で流通させることを目的に発行されました。
表面には、月桂冠を戴く
ネロ帝(在位:AD54-AD68)の横顔肖像が打ち出されています。長く伸ばした後ろ髪と太い首、二重顎と奥まった目は、美化されず写実的に表現された当時の皇帝像です。
後世に描かれた皇帝ネロの肖像 ネロは後世の人々から「暴君」の代名詞のように評価され、古代ローマ帝国の退廃性、残虐性を象徴する皇帝として認識されています。しかし近年の研究ではネロ帝治世中の施策が再評価され、また当時のローマ市民から支持されていたことが分かり、徐々にそのイメージが変化しつつあります。
当時のコインに刻まれている肖像は、必ずしも良い第一印象とは言えず、美意識と芸術性が高かったとされるネロ帝には不釣合いなものです。こうした視覚的イメージもあり、後世の人々から悪人としての評価が長く付きまとっていたとも考えられています。