ギャリソンとは「兵営」「駐屯兵」「衛戍」などを意味し、18世紀に当時のプロイセン国王が軍人たちの為に建立しました。後に大王と称されたフリードリヒ2世の墓所もこの教会に安置されました。その為、古都ポツダムはフリードリヒ大王にも所縁深い地として、同時にプロイセン軍国主義を象徴する都市として認識されていたのです。ベルリンの国会議事堂が放火によって被災した後、ヒトラー政権下の宣伝相ゲッベルスは新国会の開会式をこのポツダムで催すことを企画しました。こうして1933年3月21日、ポツダムのギャリソン教会を会場とし、ヒトラー政権下の新体制が宣言されたのです。
国会開会宣言を行うヒトラー (1933年3月21日 ポツダム・ギャリソン教会) 首相ヒトラーはヒンデンブルク大統領臨席の下、新国会の開会を宣言し、ヒトラー体制のドイツが過去の栄光を受け継ぐ政権であることを印象付けました。ゲッベルスは3月21日を「ポツダムの日」とし、ナチス・ドイツ時代の始まりの日として広く宣伝しました。その一環として、翌1934年に発行されたコインに、国会開会式典を行ったポツダム・ギャリソン教会を表現したのです。裏面にはドイツ鷲と共に、ナチスの象徴であるハーケンクロイツ(鉤十字)が小さく配されています。
このタイプのコインはポツダムの日である「21. März 1933」が入った記念タイプと、日付けを省いた通常タイプの二種類が存在します。当時からコイン収集家が多かったドイツ社会を反映してか、タイプ別に製造・発行することで、ナチス体制に対する国民の関心を得ようとしていたのかもしれません。