金と銀の合金エレクトラム(electrum,琥珀金)によって造られたヘクテ貨は、1/6スターテルの価値に相当する小さなコインです。当時、エレクトラムのコインを発行していた都市は限られていました。レスボス島のミュティレネでも同様のコインが多く発行されていることから、両都市の経済的結びつきが覗えます。
表面には酩酊を司る快楽の神
ディオニソス(ラテン名:バッカス)の横顔像が打ち出されています。ディオニソス神は葡萄酒を世界中に伝えた美男神とされ、特に女性達に篤く信奉されていました。頭部には葡萄の蔦で編まれたリースを巻いています。
バッカス神像 (ナポリ国立博物館所蔵)
ディオニソス神はローマでは「バッカス」の名で崇敬され、葡萄酒の生産を守護し、豊穣と酩酊をもたらす神として人気がありました。葡萄酒が古代ギリシャ・ローマの社会生活において重要な位置づけを得ていたことが分かります。