セウェルス朝時代の古代ローマ帝国で発行されたデナリウス銀貨。表面には、月桂冠を戴く
エラガバルス帝 (ヘリオガバルス帝 在位:AD218年~AD222年)の横顔肖像が打ち出されています。「エラガバルス」や「ヘリオガバルス」という名は、シリアの司祭長であった皇帝が信仰していた東方の太陽神に由来する渾名です。実際には偉大なる五賢帝にあやかって「マルクス・アウレリウス・アントニヌス・ピウス帝」と名乗っていました。
わずか14歳で即位した少年皇帝は、その恭しい帝号に反して艶聞が多く、派手と贅沢を愛した人物として記録されています。ローマの宮廷では豪華な宴会が頻繁に催され、妖しげな男女が出入りするようになりました。趣向として高級なバラの花を大量に宴会場にばら撒き、出席者を圧死させたという伝説まで生まれたほどでした。
裏面には、
女神アバンダンティアの立像が表現されています。コイン上のアバンダンティア女神は、両手で豊穣の角(コルヌ・コピア)を携えており、そこから溢れ出したコインをばら蒔く大胆な構図で表されています。その周囲部には女神の名を示す「
ABVNDANTIA AVG (アバンダンティア女神)」の銘が刻まれています。
アバンダンティアは幸運の女神であり、富や豊穣、成功をもたらすとされています。また財産や投資の守護神とされ、金銭や豊穣などの富を人々にもたらす女神として信奉されました。
アバンダンティア女神