走る兵士の姿は古代オリンピックにおける徒競走者、またはトロイ戦争に登場する俊足の戦士アイアースを表現したものとされる。
裏面の三脚巴(トリスケル)は発行都市アスペンドスの象徴である。もともとはトリスケルのみが表現されていたが、紀元前5世紀半ば頃よりライオンと組み合わせて表現されるようになった。極印の改良によって図案を複雑化し、偽造防止に寄与していたとみられる。
コインに表現されたトリスケル&ライオン像は後世に創造された悪魔ブエル(※自然哲学や医学、薬草や治癒の効能を授けるとされる)と類似している。ブエルは多数の足を持つライオンとして表現され、このコインの図像も影響を与えた可能性がある。
(※挿絵:コラン・ド・プランシー『地獄の辞典』より)