アス銅貨はローマにおける最も基礎的な貨幣であり、市民の日常生活で頻繁に用いられた身近なコインであった。
現在の1ユーロや1ドル、1ポンドのような価値だったとされ、生活用品や食料、街中での飲食の支払いをはじめ、浴場や闘技場の入場料、娼館での支払いまで幅広く使用された。発行枚数は多かったと想像されるが、人々の手に渡りやすく市中での流通と磨耗が激しかったこと、素材である銅の劣化、また一枚あたりの購買力価値の低さ(※1デナリウス=16アス)から貯蔵には向かず、後世まで良好な状態で現存するものは希少である。
ローマ時代のデリカトゥス(想像図) デリカトゥスは食料や日用品を提供する小規模商店。軽食も提供し、ローマ市民に多く利用された。こうした店舗での支払いにはアス銅貨が主に使用されていた。