• ササン朝ペルシア ドラクマ銀貨 ホスロー2世/拝火祭壇
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 6世紀末のササン朝ペルシアで発行されたドラクマ銀貨。表面には翼や新月、太陽等が組み合わされた装飾冠を戴くホスロー2世の胸像が打ち出されています。ホスロー2世はビザンツ(東ローマ)帝国へ侵攻し、アラビアやパレスチナ、エジプト、シリア、ロードス島から小アジアに至る広大な地域を占領、一時は帝都コンスタンティノポリスをも包囲した武人王として知られています。ホスロー2世はアルメニアの美しき王女シーリーンを王妃として迎えたことで、後に中世ペルシアの恋愛叙事詩『ホスローとシーリーン』のモデルにもなりました。

 裏面にはササン朝の国教であるゾロアスター教(拝火教)を象徴する聖火の祭壇が表現されています。左右には聖火を護る二人の神官(または王自身)が立ち、周囲には三重になった円枠、四方には新月と星の紋様が配されています。


 ササン朝時代のドラクマ銀貨は王の治世が代わっても基本デザインは変わらず、銀の品位や大きさ、重量もあまり変わりませんでした。また広大な国土の各地方に造幣所を設け、大量に生産を行ったことから、中央アジアやアラビア半島などではシルクロード交易の主要な決済手段として用いられました。『西遊記』で知られる中国の僧、三蔵法師玄奘は、西遊記の原案となった著書『大唐西域記』の中で、当時のペルシアで使用されていたドラクマ銀貨について言及しています。主に銅銭を使用していた唐代の中国からみれば、ササン朝ペルシアが発行するドラクマ銀貨は大きく華麗な意匠が施され、また純度も高い優れた銀貨に見えたことでしょう。


 

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