11世紀半ば、ビザンチン帝国(=東ローマ帝国)の首都コンスタンティノポリスで製造されたヒスタメノン・ノミスマ金貨。ヒスタメノン・ノミスマは「標準貨幣」を意味し、ソリダス金貨を発展させた金貨として発行されました。この時代に造られた金貨は
独特な製造方法から御椀状になっており、通称「カップコイン」とも呼ばれています。 表面のイエス・キリスト像が凸になり、裏面のコンスタンティノス9世の像が凹になっています。
表面の
イエス・キリスト像はコンスタンティノポリス(*現在のイスタンブール)に健立されたアヤソフィア大聖堂内にあるモザイクイコンと同じ構図であり、伝統的なビザンチン様式を形容していることが分かります。
イエス・キリストのモザイクイコン 裏面に表現された皇帝コンスタンティノス9世像は特徴的な冠を戴き、十字架の王笏と宝珠を手にしています。この
正面像の構図はイエス・キリストや聖母マリアなどのイコンに代表されるように、キリスト教の神聖性を象徴するものです。ここではビザンチン皇帝が東方正教会の長であり、守護者であることを示しています。
コンスタンティノス9世モノマコス(孤独戦士)はもともと元老院議員を経験した貴族でした。13年の治世中、コンスタンティノス9世は文官を重用し、文芸や学問を奨励しました。しかし財政・軍事面では目立った功績を残せず、ビザンチン帝国の衰退を進めたとも評されています。