2世紀初頭、ローマ帝国東方のアラビア属州(アラビア・ペトラエア)で造られたドラクマ銀貨。現地に駐屯する兵士への給与に使用されていたと考えられています。
コインにはアラビアを象徴する女神像が表現されています。女神は枝葉と茎の束を持ち、足元には小さなラクダを配しています。同様のデザインは、ほぼ同時期にローマ本国で発行されたデナリウス銀貨にもみられることから、トラヤヌス帝によるアラビア併合を象徴する意匠だったと考えられます。
ヨルダンの「ペトラ遺跡」で知られるナバテア王国はAD106年にトラヤヌス帝によって併合され、新たに「アラビア属州」として再編されました。トラヤヌス帝は新たな属州にローマ交通網の一つ「新トラヤヌス街道」を敷設し、州都ボストラとペトラ、外港アカバを結びました。
ナバテア王国の古都「ペトラ遺跡」 (ヨルダン)