紀元前4世紀の古代フェニキアで発行されたシェケル銀貨。このコインは、地中海に面したフェニキアの都市ティルスを支配した、アゼミルコス王の治世下に造られました。
表面には
フクロウの全身像が表現されています。フクロウは、鉤状に曲がった杖を背負った姿で刻まれており、頭部には耳のような小さな冠羽が二つ確認できます。この姿はアテネのフクロウコインとは趣が異なった、フェニキア独特の可愛らしい造型です。
裏面には神話上の幻獣
ヒッポカンポスが表現されています。ヒッポカンポスは「海馬」とも呼ばれ、その名の通り海に暮らす馬とされていました。上半身は馬、下半身が魚で構成されたヒッポカンポスは、海の大神ポセイドンが乗る馬車を牽く存在とされていました。
このコインでも、ヒッポカンポスの背に乗る人物が表現されています。この人物像は、都市ティールの守護神メルカルトとみられています。ヒッポカンポスの下には海の波間が刻まれ、底にはイルカが泳ぐ様子で表現されています。