8世紀初頭のイスラーム帝国で発行されたディルハム銀貨は、ギリシャの「ドラクマ」に由来する単位として中東地域で広く流通し、イスラーム帝国の勢力拡大と共に流通範囲を広げました。今尚、「ディルハム」はアラブ首長国連邦やモロッコなどの通貨単位として残されています。
このディルハム銀貨は
ウマイヤ朝第6代カリフ ワリード1世(在位:705年-715年)の治世に造られました。
ウマイヤ朝はイスラーム教の最高指導者カリフの地位を代々継承した、ウマイヤ家による王朝です。都はシリアのダマスカスに置かれ、西はモロッコ、イベリア半島から東はアフガニスタン、パキスタンにまで至る広大な地域を支配しました。
ワリード1世の治世はウマイヤ朝の最盛期とされ、史上最大の版図を出現させた他、ダマスカスに現存する世界最古の大モスク「ウマイヤド・モスク」を建立しました。
ウマイヤモスク 画像は1890年にドイツ人画家グスタフ・バウエルンファイントによって描かれた作品
ウマイヤ朝の功績は広大な帝国内で通用する統一通貨
ディルハム銀貨と
ディナール金貨の発行を開始したことです。その様式は偶像崇拝を禁ずるイスラーム教の考えに基づいたものであり、表裏には聖典『コーラン(*クルアーン)』の一節が刻まれています。
表面には、イスラーム教における信仰を告白する文言
「アラーの他に神はなし」と刻まれ、裏面には
「ムハンマドはアラーの使徒である」と記されています。