紀元前1世紀半ば、ユリウス・カエサルが活躍したガリア戦争中に発行されたデナリウス銀貨。表面には戦勝トロフィーを背負った軍神マルス、裏面にはローマの騎兵と打ち倒されるガリア兵たちが表現されています。
マルス神は戦いを司る軍神として、兵士の間で人気のあった神です。他方で、3月(Marchはマルス神の名に由来する)の神、即ち「春の神」としての一面を持ち、植物の成長を守護するとも考えられていました。また、マルスはローマの建国者 ロムルスの父親としても知られ、血気盛んなローマ人男性の中には「マルス神の息子」を自称する者も多くいたと云われます。
共和政時代のデナリウス銀貨は帝政時代と比べて重く、銀品位も良かったため、多くは資産価値が認められ貯蔵されていました。ローマが対外的な領土拡張策を推進していた時代、戦地へ赴く兵士が出征前に資産を隠す場合があったと考えられています。しかし埋蔵した本人が帰還せず戦地で没し、他者にも資産の存在が知られなかったため、そのまま退蔵されたコインが後世にまとまって出土するケースもあります。