紀元前4世紀、ボスポラス海峡の植民都市ビザンティオン(現在のトルコ,イスタンブール)で造られたシグロス銀貨。コインには牝牛の全身像が打ち出されており、下部にイルカが配されていることから、海上を渡っている様子と分かります。この牝牛はギリシャ神話に登場する
イオを表現したものとされています。
イオは女王神ヘラに使える女神官であり、大神ゼウスの愛人とされました。ゼウスは妻であるヘラの嫉妬からイオを守るため、彼女を白い牝牛に変身させました。
ヘラに見つかるイオとゼウス (ピーテル・ラストマン, 1618年)
牝牛が姿を変えたイオだと見破ったヘラは虻を放ち、イオを追い立てました。虻に追われたイオは牛の姿のまま逃げ回り、最終的にエジプトへ流れ着いたと云われています。この逃亡中にイオが渡った海峡がビザンティオンの位置するボスポラス海峡であり、海峡名(ボスポラス=「牝牛の渡渉」の意)の由来になったとされています。