19世紀初頭、第一帝政期のフランスで発行された20フラン金貨。ナポレオン時代を代表する金貨です。
表面には、皇帝
ナポレオン1世 (在位:1804年~1814年,1815年)の横顔肖像が打ち出されています。その左右には
「NAPOLEON EMPEREUR. (ナポレオン皇帝)」銘が刻まれています。肖像の首下部分には、極印の作製を手掛けたスイス出身の彫版師ジャン=ピエール・ドローのサイン「DROZ」が刻まれています。
肖像のナポレオンは月桂冠を戴いており、その姿は伝統的なフランス王というよりも古代ローマ皇帝の風貌に類似しています。ナポレオン自身が古代ギリシャ・ローマ文化を意識し、自らと古代の英雄の姿を重ねたイメージを宣伝していたことが、当時発行されたコインの肖像にもよく表れています。
裏面には月桂樹のリースに囲まれた額面が表現され、周囲部には国号
「EMPIRE FRANÇAIS. (フランス帝国)」銘が刻まれています。下部には発行年とフランスの象徴である雄鶏、パリ造幣局で製造されたことを示す「A」銘が刻まれています。また縁部分には陰刻による
「DIEU PROTEGE LA FRANCE (神はフランスを護る)」銘があります。
この金貨が発行された翌年の1812年、ナポレオンによるロシア遠征が開始されました。この時期に発行された多くの金貨は軍資金としても利用され、遠征の先々でも使用されました。
ロシア遠征は甚大な損害を蒙った末に敗北し、結果的にナポレオン失脚の大きな要因となりました。ヨーロッパ史上の大きな転換期に発行された金貨です。
パリ テュイルリー宮殿前で閲兵するナポレオン