聖アンブロシウス(アウレリウス・アンブロシウス, 339年-397年)は4世紀のローマ帝国で活躍した神学者であり、374年にミラノの司教に選出され、没後は同都市の守護聖人となった。教父アウグスティヌスを回心させた人物としても知られる。またグラティアヌス帝やウァレンティニアヌス2世など同時代のローマ皇帝たちにも強い影響力を持ち、391年にはテオドシウス帝を説得してキリスト教をローマ帝国の国教に定め、異教の神殿を閉鎖するよう働きかけた。
聖アンブロシウスに聖堂入場を拒まれるテオドシウス帝 (ヴァン・ダイク作) 390年にテオドシウス帝は将軍ブテリク殺害の報復として、数千人に及ぶテッサロニカ市民を虐殺した。アンブロシウスはこれを重大な罪とみなし、皇帝を破門して教会に立ち入ることを禁じた。皇帝が自らの罪を懺悔し、破門が解かれたことで司教=キリスト教の権威が、ローマ皇帝=世俗の権威に勝ることが示された。