2世紀半ば、アントニヌス朝時代の古代ローマ帝国で発行されたデナリウス銀貨。
表面には当時の皇帝アントニヌス・ピウスの皇妃
ファウスティナが表現されています。妻を深く愛していたアントニヌス・ピウス帝はファウスティナ妃が崩御した後、彼女を神格化することで追悼しました。神格化された後に発行されたファウスティナ妃のコインには、彼女の肖像と共に神格を示す「DIVA」銘が刻まれています。夫であるアントニヌス・ピウス帝は神格化された亡き妻を偲ぶためか、自らの治世が終わるまで様々な種類のファウスティナコインを発行させたのです。
裏面には、
フォルトゥナ女神の立像が表現されています。フォルトゥナは幸運と好機をもたらす運命の女神とされ、ローマ市内にもフォルトゥナ女神を祀る神殿が建立されました。この立像では球体を掲げながら、細長い舵を支えています。これは「フォルトゥナ=運命」こそが人生の舵を握っていることを示しています。
フォルトゥナ女神像 ヴァティカーノ美術館所蔵。ローマの外港オスティアで祀られていたもの。