2世紀の古代ローマ帝国で発行されたデナリウス銀貨。表面には
トラヤヌス帝(在位:AD98年~AD117年)の横顔肖像が打ち出されています。トラヤヌス帝はローマ史を代表する武帝であり、ダキア征服やアラビア属州の新設など、積極的な領土拡大政策を推進しました。その治世中にローマ帝国の版図は史上最大となり、元老院からは「至高の君主」という尊称号を授かりました。ローマ五賢帝にも数えられた、帝国最盛期を代表する皇帝の一人です。
裏面には
アラビアを象徴する女神像が表現されています。女神は枝葉とシナモンの束を持ち、足元には小さなラクダを配しています。トラヤヌス帝はAD106年に東方のナバテア王国を併合し、「アラビア属州」として再編しました。
東方交易の窓口のひとつだった、アラビアの征服を誇示する歴史的な意匠です。
トラヤヌス帝治世下のローマ帝国版図 北はブリテン島、南はナイル川まで拡大したローマ帝国は、地中海全域を統治する、古代世界有数の大帝国でした。現在の地域区分では版図の1/3がヨーロッパ、1/3をアジア、残る1/3をアフリカが占めていました。多様な地域に跨るローマ帝国は各地からもたらされる富によって支えられ、空前の繁栄を謳歌しました。