3世紀の古代ローマ帝国で発行されたアス銅貨。アスは古代ローマの貨幣では特に小さな単位のコインであり、主に一般の民衆の間で広く使われました。日常での買物の支払い等に用いられたアス銅貨は、想定されている膨大な発行量に比べ、良好な状態で現存しているものが少なく貴重です。
コインの表面には少年皇帝
ゴルディアヌス3世 (在位:AD238年~AD244年)の胸像が打ち出されています。頭部には月桂冠を戴く軍装姿ですが、その容姿には幼さが残ります。
裏面には、
女神アバンダンティアの立像が表現されています。コイン上のアバンダンティア女神は、両手で豊穣の角(コルヌ・コピア)を携えており、そこから溢れ出したコインを大地に注ぎ出す大胆な構図で表されています。その周囲部には女神の名を示す「
ABVNDANTIA AVG (アバンダンティア女神)」の銘が刻まれています。
アバンダンティアはローマ神話に登場する幸運の女神であり、富や豊穣、成功をもたらすとされています。また財産や投資の守護神とされ、金銭や豊穣などの富を人々にもたらす女神として信奉されました。
アバンダンティア女神 女神の左右には
「S C」銘が大きく配されています。これは「Senatus Consulto (元老院決議により)」を示す省略銘であり、当時の銅貨の発行権限が皇帝ではなく、元老院に帰していたことを示しています。