※裏面にアジャストメントマーク(=製造時、重量を調整するために付けられたヤスリ跡)あり
18世紀末、革命期のフランスで発行された、大型のエキュ(=6リーヴル)銀貨。フランス革命の時代を今に伝える、世界史を語る上では貴重なコインです。
表面には国王
ルイ16世(在位:1774年~1792年)の横顔肖像が打ち出されています。首が太くまるで牡牛のような造型であり、極端に美化されている様子は見受けられません。
裏面には天使の立像が表現されています。裸の天使は石版に「
CONSTITUTION (憲法)」を刻み、上部には革命の成果を示す「
REGNE DE LA LOI (法による統治)」銘が配されています。左側に配された権威の象徴「ファスケス」には自由の帽子が被せられ、右側には雄鶏が配せられています。表面の国王像に反して革命色の強いデザインです。
このコインは1792年にパリで製造されましたが、この年の8月にはルイ16世とその家族が住まうパリのテュイルリー宮殿が襲撃され、国王一家はタンプル塔へ幽閉されました。憲法で認められていた国王の大権は停止され、同年の9月には共和政樹立・王政廃止が宣言されました。ルイ16世は12月に裁判にかけられ、有罪判決が出された翌年1793年の1月にギロチン台で処刑されます。
フランス革命にとって重要な年、ルイ16世にとっても激動の最期の時期に発行された、因縁深いコインです。
タンプル塔のルイ16世一家後世に描かれた絵画。ソファで横になり眠っているのがルイ16世、隣で編み物をしているのが王妃マリー・アントワネット。実際には図のように家族の面会が許されることはほとんど無かったとされる。