3世紀、セウェルス朝時代の古代ローマ帝国で発行されたデナリウス銀貨。
表面の皇帝像、裏面のアバンダンティア女神像と共に、銘文など細かい点も確認できる良好な状態です。その保存状態から、打ち出しされてからほとんど市中で流通しなかったものとみられます。
コインの表面には、月桂冠を戴く
アレクサンデル・セウェルス帝(在位:AD222年~AD235年)の横顔肖像が打ち出されています。その姿は短髪に刈り上げられた、青年皇帝として表現されています。アレクサンデル・セウェルスは即位時にまだ11歳でしたが、優秀な側近と母親に補佐されながら帝国を統治しました。また皇帝本人も実直で穏やかな人物だったとされ、カラカラ帝暗殺後、混乱していたセウェルス朝下のローマ帝国は一応の安定をみました。なお、アレクサンデル・セウェルス帝の時代は日本での弥生時代にあたり、邪馬台国の女王 卑弥呼が活躍した時期にあたります。
裏面には、
女神アバンダンティアの立像が表現されています。コイン上のアバンダンティア女神は、両手で豊穣の角(コルヌ・コピア)を携えており、そこから溢れ出したコインを大地に注ぎ出す大胆な構図で表されています。その周囲部には女神の名を示す「
ABVNDANTIA AVG (アバンダンティア女神)」の銘が刻まれています。
アバンダンティアはローマ神話に登場する幸運の女神であり、富や豊穣、成功をもたらすとされています。また財産や投資の守護神とされ、金銭や豊穣などの富を人々にもたらす女神として信奉されました。
アバンダンティア女神