1世紀、ユリウス朝時代の古代ローマ帝国で発行されたアウレウス金貨。ガリア地方の植民都市 ルグドゥノム (現在のフランス、リヨン市)に設けられた造幣所で造られました。
ティベリウス帝の治世下、派手な公共事業や散財は行われず、堅実な財政運営が行われた結果、ローマの財政は莫大な富を蓄財できるまでになりました。この時代に造られたアウレウス金貨は純度、重量共に高く、多くの富裕層や有力者が大切に貯め込んでいたとみられています。しかし後代のカリグラ帝は豪勢と贅沢を好み、その放漫財政から帝国の富をあっという間に散財しました。またネロ帝の時代には大火災に見舞われたローマを復興するため、純度の高い古い金貨を鋳潰して純度、重量を改める改鋳が行われました。このため、現存するティベリウス帝時代の金貨は隠匿、または埋蔵されて忘却されていたものであり、美しい状態で残されているものは貴重です。
大帝国ローマの富と権威、繁栄を象徴し、当時のローマ人の社会を今に感じさせる貴重な金貨。資産としての価値もある、歴史的に重要な宝物の一つです。
表面には、月桂冠を戴く第二代皇帝
ティベリウス(在位:AD14年~AD37年)の横顔肖像が打ち出されています。周囲部には「TI CAESAR DIVI AVG F AVGVSTVS (ティベリウス・カエサル 神君アウグストゥスの息子にして皇帝)」銘が刻まれています。
治世当時のティベリウス帝は暗愚な皇帝と評価され、ローマ市民の人気も低い皇帝でした。歴史家は当時の怪しげな噂話を多く記したことから、長らく暗君と見られていました。しかし近年では、ローマ帝国の基礎を磐石にした堅実な皇帝として再評価されています。
ティベリウス帝 リウィア 裏面にはティベリウス帝の生母
リウィア(BC58年~AD29年)が表現されています。平和の女神パックスとして表されたリウィアは玉座に腰掛け、王笏とオリーヴの枝葉を持っています。左右には、ティベリウス帝の称号のひとつである「大神祇官」を示す「PONTIF MAXIM」銘が配されています。
リウィアは初代皇帝アウグストゥスの妻であり、夫亡きあとも皇帝の母として影響力を保ちました。リウィアが崩御した後、国母としてアウグストゥスの神殿に祀られ、同神殿は「アウグストゥス・リウィア神殿」に改称されました。