2世紀末の古代ローマ帝国で発行されたデナリウス銀貨。表面には当時の副帝　カラカラの横顔肖像が打ち出されています。カラカラ帝は全ての属州民にローマ市民権を与えた「アントニヌス勅令(カラカラ勅令)」や、ローマ市内に建設した巨大公衆浴場「カラカラ浴場」の名で知られます。また、コインの世界では一枚でデナリウス銀貨2枚に相当するとした名目貨幣、通称「アントニニアヌス」の発行で有名です。
　「カラカラ」とは皇帝の渾名であり、同名のフード付きマントを好んで着用していたことからこう呼ばれました。在世中は五賢帝時代の名君にあやかって「アントニヌス」の名を多用していました。

　カラカラは反目していた弟ゲタを殺害し、エジプトのアレクサンドリア市民を大量虐殺するなど、大変激しい気性の暴君として恐れられました。彼の肖像はコインや彫像などを含め、厳めしい表情で残されたものが多くありますが、この時代はまだ幼さが残る少年像として表現されています。