紀元前2世紀半ば、小アジアのアイオリス地方で発行されたテトラドラクマ銀貨。表面には伝説上の女戦士部族「アマゾネス」の横顔像が打ち出されています。かつて女戦士部族アマゾネスの軍団が小アジアのアイオリス地方に侵攻した際、武功を立てたアマゾネスの名を冠して「キュメ」という都市が建設されたと伝えられます。
裏面には月桂樹のリースに囲まれた馬が表現されています。このように裏面のデザインを月桂樹のリースで囲むスタイルは、紀元前2世紀~紀元前1世紀頃のヘレニズム期、小アジア~フェニキアの諸都市で発行されたコインに多く見られます。この様式はローマに征服される直前の時期まで、各地の都市で広く流行していたとみられています。
アマゾネスのテトラドラクマ銀貨は小アジア西部、特にエーゲ海沿岸の都市遺跡から出土するケースが確認されています。壺などに入れられまとまった状態で発見されていることから、当時の人々が蓄財として退蔵し、その後何らかの理由で回収できなかったものとみられます。または神殿への献納品、都市の資産だった可能性もあります。