16世紀後半、テューダー朝時代のイングランド王国で発行された1/2ポンド金貨。この当時、イングランドを統治していたのは女王　エリザベス1世(在位:1558年～1603年)でした。
　後に「エリザベス朝時代」とも称された女王の治世は、イギリスを世界の大国に押し上げた輝かしい時代として記録されています。スペインの無敵艦隊を破り、海外への進出を加速させたイギリスは富を蓄え、ヨーロッパ大陸の大国と肩を並べる存在に成長します。また国内ではシェイクスピアが活躍するなど、文化的にも重要な時代を迎えています。

　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　イングランド女王　エリザベス1世

　50年近くにわたってイングランドに君臨し、国の繁栄のために人生を捧げたエリザベス1世は、生涯未婚を貫いたことから「ヴァージン・クィーン(処女王)」の名でも知られています。後にイギリスでは「女王の治世は繁栄する」と云われるようになるほど、エリザベス1世は多くのイギリス人から尊敬されました。


　金貨の表面に表現されたエリザベス1世は若く美しく、可憐な少女のような容姿です。頭部には王冠を戴き、長い髪の流れも表現されています。そして特徴的な襟元、通称「エリザベス・カラー」も表現されています。
　その周囲にはラテン語で「ELIZABETH D G ANG FRA ET HI REGINA (エリザベス 神の恩寵たるイングランド、フランスならびにアイルランドの女王)」の尊称号銘が刻まれています。

　裏面には王家の紋章が表現されています。盾の中に表現された三頭のライオンはイングランドを、三つの百合の花はフランスとのつながりを示しています。周囲には「SCVTVM FIDEI PROTEGET EAM (信仰の盾が彼女を護らん)」の銘が刻まれ、左右には「ELIZABETH REGINA (エリザベス女王)」を示す「E R」の銘が配されています。


　この当時、ハンマーによる手作業で造られたコインは薄手のものが多く、流通過程で磨耗が進みやすい傾向がありました。特に金品位91.6％の1/2ポンド金貨はイギリスの国力と富を象徴する金貨の一つであり、イギリス国内だけでなくヨーロッパ大陸の商人の間でも受け入れられていました。金特有の柔かい性質もあり、状態の良いものは希少です。

　この1/2ポンド金貨は、エリザベス女王の肖像に美しさと気品、上品さが残り、大変貴重な状態といえます。世界の歴史における重要な時代の金貨。歴史的価値のある本物の宝物です。