ネロ帝治世下の古代ローマ帝国で発行されたテトラドラクマ銀貨。このコインは東方、シリア属州の首都アンティオキアで造られたものであり、属州内で流通させることを目的に発行されました。
表面には月桂冠を戴く
ネロ帝 (在位:AD54年~AD68年)の横顔肖像が打ち出されています。治世の末期に造られたものですが、本国ローマで発行されたコインの肖像と比べて首が長く、スリムな容姿で表現されています。周囲部には、「(NER)O CLAVD DIVI CLAVD F CA(ESAR AVG GERM) (ネロ・クラウディウス 神君クラウディウスの息子 カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス)」銘が刻まれています。
裏面には
先帝クラウディウス (在位:AD41年~AD54年)の横顔像が表現されています。クラウディウス帝はネロにとっては義理の父親であり、その崩御後は神格化されました。コインの表面に現皇帝を、裏面に先帝を表現することで、神格化された先帝クラウディウスを偲び讃えると共に、その息子である現皇帝ネロの威厳と正統性を宣伝する目的があったと考えられます。特に地中海東方地域では伝統的に、時の支配者を現人神として崇拝する傾向が強かったこともあり、皇帝崇拝の根強い東方のシリアでこのようなコインが発行されたとみられています。
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