紀元前5世紀のエーゲ海、レスボス島で発行されたヘクテ貨。このわずか1cmの小さなコインは、金と銀の自然合金
エレクトラムによって造られており、当時はおよそ1/6スターテルの価値に相当したとみられています。
表面には月桂冠を戴く
アポロ神(アポロン)の横顔像が打ち出されています。月桂樹はアポロ神の聖樹とされ、様々なコインに表現されたアポロ神はほぼ月桂冠を戴いています。
オリュンポス十二神に数えられるアポロは、大神ゼウスの息子であり、月の女神アルテミスとは双子の関係とされています。詩歌や芸術の才能を司り、神託をもたらす予言の神とされました。また治癒や弓術、光明といった様々な側面を持つ神として、古代ギリシャ・ローマ時代には広く信奉されました。その姿は美しい青年像であり、古代人にとって理想的な「永遠の美」を体現する神として、数多くの彫刻や壁画といった芸術作品に表現されています。
コインの裏面には
子牛の頭部が表現されています。アポロ神は多くの牛を飼う牧畜の神としても知られていました。神話では弟であるヘルメス神がアポロ神の牛を盗み、その牛の腸で竪琴を作ります。この竪琴を気に入ったアポロ神は、カドゥケウス(伝令の杖)と竪琴を交換し、その後それぞれを象徴する持物になったとされています。