紀元前5世紀後半、最盛期の都市国家アテネで発行されたテトラドラクマ銀貨。特に、裏面のフクロウの打ち出しは素晴らしく、羽毛の細部まで表現されています。生きているようなフクロウの造形は古代ギリシャ人の感性の豊かさ、技術力の高さを物語っています。
このコインは通称
「フクロウコイン」と呼ばれ、古代ギリシャ時代を象徴するコインとして広く知られています。
テトラドラクマは「4ドラクマ」を意味し、古代ギリシャ世界では貿易通貨として用いられた銀貨でした。同時代のアテネはデロス同盟の盟主としてギリシャ各都市を傘下におさめ、まさに最盛期を迎えていました。またトラキア地方の銀山を獲得したことから豊富な銀が供給され、高品質な銀貨を多く生産できる体制が整っていたのです。
かのパルテノン神殿が建設され、ペロポネソス戦争が勃発した時期に造り出された歴史あるコイン。人類史の重要な一ページを今に伝える芸術品です。
アテネ アクロポリスの丘とパルテノン神殿と青銅像「アテナ・プロマコス」(想像図) 表面にはアテネの守護女神
アテナの横顔像が打ち出されています。優しく微笑むアテナ女神は球状の耳飾りをつけ、頭部にはアッティカ式の丸兜を被っています。兜の周囲には、オリーヴの葉が表現されています。
ギリシャ神話においてアテナ神は知恵と戦術を司る女神とされています。伝説では都市アテネの建設もアテナ神によるものとされ、同都市の守護神として奉られました。アクロポリスの丘に建立されたパルテノン神殿は、このアテナ神に捧げられたものです。
裏面にはアテナ神の聖鳥とされる
フクロウが表現されています。このフクロウは「コキンメフクロウ」という種類のフクロウであり、細身で小柄な見た目が特徴です。古代のコインにもその特徴が明確に表されています。
フクロウの左上にはオリーヴの枝葉と三日月、右側には発行都市アテネを示す
「ΑΘΕ」の銘が配されています。