☆カエサルを悩ませたガリアの若き族長 ヴェルチンジェトリクスを表現したと云われるデナリウス銀貨。☆捕らわれたガリア族長の肖像がしっかりと打ち出された、美しい状態。☆全体にかかった経年変化色(トーン)も、この貴重な古代ローマコインの価値を高めています。 コインの表面には、長髪をなびかせるガリアの族長
ヴェルチンジェトリクス(BC72年~BC46年)の横顔肖像が刻まれています。ヴェルチンジェトリクスはカエサルによるガリア征服戦争の最中、バラバラだったガリア諸部族を結集して連合軍を組織し、ガリアの自由と独立の為にカエサルに立ち向かった人物でした。カエサルが著した『ガリア戦記』では、長年に亘ったガリア軍との激しい戦いが記録されています。
BC52年、ユリウス・カエサル率いるローマ軍と、ヴェルチンジェトリクス率いるガリア部族連合軍は、アレシアで激しい戦いを繰り広げました。この会戦に敗れたヴェルチンジェトリクスは部下の身の安全と引き換えに武装解除に応じ、自らローマ軍に投降したのです。
カエサルに投降するヴェルチンジェトリクス ユリウス・カエサルはポンペイウス派との戦いの最中、自らの最大の功績であるガリア征服をローマ市民に再認識させるため、あえて最大の敵将ヴェルチンジェトリクスの姿を刻んだこのコインを造らせたと考えられています。内戦によって延期されたローマ凱旋式と、ヴェルチンジェトリクスの処刑が行われたのはBC46年でした。生存中の彼の姿が唯一残されたのが、このデナリウス銀貨だったのです。
このコインでは裏面の左側が見切れていますが、ビガ(二頭立て馬車)に乗っているのは裸の男性です。この裸の人物はガリア軍の兵士を表したものとされ、ローマ側から見たガリアの野蛮性を示しています。
今も尚、ヴェルチンジェトリクスは命を賭して故郷を守ろうとした人物として、フランスでは英雄視されています。また同タイプのデナリウス銀貨は、塩野七生女史著『ローマ人の物語』文庫版第10巻の表紙にも使用されています。