• 大ファウスティナ妃/ジュノー女神
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 2世紀半ば、アントニヌス・ピウス帝治世下の古代ローマ帝国で発行されたデナリウス銀貨。表面には皇妃ファウスティナの横顔肖像が打ち出されています。ファウスティナは同名の娘との混同を避けるため、便宜的に「大ファウスティナ」「小ファウスティナ」、または「ファウスティナ1世」「ファウスティナ2世」などと呼ばれます。

 このコインはファウスティナが崩御した後に、夫であるアントニヌス・ピウス帝の治世下で発行されました。肖像の左側に配された「DIVA」銘は神君を示し、崩御後に神格化されたことを示しています。愛妻家だったアントニヌス・ピウス帝は皇妃の亡き後もその存在を思い続け、神格化された女神としてファウスティナがコインに表現され続けたと云われています。


 裏面には神々の女王ジュノー(ユーノー)が表現されています。長衣を纏った女神は左手で王笏を携え、威厳溢れる姿で表現されています。

 ジュノーは最高位の女神であり、ギリシャ神話のヘラに相当します。時には王笏を手にし、自らの聖鳥である「孔雀」を引き連れた堂々たる姿で表現されることもあります。こうした力強いジュノーの姿と権威は、社会的地位の低かった現実の古代ローマ社会の女性達にとって心強い味方でもありました。

 帝政時代には皇帝を最高神ジュピター(ユーピテル)に、皇妃をその妻ジュノーに見立てる皇帝信仰が広まり、その過程でジュノーは皇妃の象徴であり守護神とされました。皇妃のコインは各時代に盛んに発行されましたが、その裏面にはジュノーも共に表現されています。


 6月はジュノー女神の月とされ、英名の「June」は女神の名前に由来しています。この月に結婚式を挙げた花嫁はジュノー女神の加護を受けられるとして、現在にも続く「ジューンブライド(六月の花嫁)」伝説が生まれたとされています。

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                      天上のジュノー女神
        豪華な御車に乗り、二羽の孔雀に引かせた姿。先導役を務めるのは月の女神ルナ。


 

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