表面には
トラヤヌス帝(在位:AD98年~AD117年)の横顔肖像が打ち出されています。トラヤヌス帝はローマ史を代表する武帝であり、積極的な領土拡大政策を推進しました。その治世中にローマ帝国の版図は史上最大となり、当時の元老院からは「至高の君主」という尊称号を授かりました。ローマ五賢帝にも数えられた、帝国最盛期を代表する皇帝の一人です。
裏面には国家の守護女神
ウェスタが表現されています。下部には女神の名を示す「VESTA」銘が確認できます。
ウェスタは竃の守護女神から転じて家庭の守護神となり、古くからローマ人に信仰されてきた女神です。そして国家を大きな家族と捉えたローマ人によって「ローマ国家の守護女神」と認識され、ローマの中心部 フォルム・ロマヌムにはウェスタの神殿が建立されていました。
ウェスタ女神のイメージ (18世紀、アンジェリカ・カウフマン作)
ウェスタ神殿に据えられた「不滅の聖火」は、貞潔を重んじる処女の巫女たちによって大切に護られていました。ウェスタ女神のヴェールは貞潔さと厳粛さを象徴しています。