紀元前3世紀、シチリア島最大の都市国家シュラクサイ(シラクサ)で発行された60リトラ金貨。この小さな古代金貨は、60年の長きにわたってシュラクサイを統治した
僭主ヒエロン2世によって発行されました。 ヒエロン2世の治世下、シュラクサイは文化・経済の面で繁栄し、シチリア島で最も強力な都市国家となっていました。古代ギリシャを代表する
科学者アルキメデスが活躍したのもこの時代です。
ヒエロン2世とアルキメデス (「黄金の王冠」の逸話より) 金貨の表面には春をもたらす花の女神
ペルセフォネが表現されています。神話におけるペルセフォネは豊穣神デメーテールの娘であり、冥界神ハーデスの妻として語られます。母親のデメーテールはペルセフォネが冥界に連れ去られしまったことを悲しみ、娘が冥界にいる一年の1/3は冬になると云われています。
裏面には疾走する
ビガ(二頭立て馬戦車)が表現されています。このビガはかつてオリンピアの競技大会において、シュラクサイの代表が優勝したことを記念しているとされます。また下部には小さな文字で、
発行者ヒエロンの名銘「ΙΕΡΩΝΟΣ」が刻まれています。
シュラクサイで発行されたコインは、どれも古代ギリシャを代表する名品コインとして人気があります。特に金貨は発行数も比較的少なく、その小ささも相まって希少性があります。わずか17mm、4.25gの大きさですが、そこに刻まれたモティーフの精密さは素晴らしいものがあります。当時のシュラクサイが有した、コイン造型の技術力の高さが窺えます。