紀元前5世紀、
古代オリエントを支配した大帝国 アケメネス朝ペルシアが発行した金貨。 アケメネス朝はペルシアを中心に繁栄した王朝であり、版図は中央アジア~小アジア、メソポタミア、フェニキア、エジプトに至る広域なものでした。アケメネス朝は強大な軍事力を背景に、中央集権的な国家を形成しました。広大かつ多文化・多民族のオリエントを統治するため、「王の目」「王の耳」と呼ばれた監察官を全土に配置した他、駅伝制による「王の道」を張り巡らせました。一方で言語や宗教、慣習といった地域ごとの独自性には配慮し、納税と軍役さえ果たせば内政には干渉しない統治を行ったとされます。
アケメネス朝の宮殿 (想像図) 大帝国アケメネス朝は安定した統治により、国内の貨幣経済を確立することに成功します。そのために金貨・銀貨による貨幣統一と、税制の整備を推進しました。そのために世界史上初めてコインを発行したリディア王国を征服した後、このリディアの制度と技術をそのまま取り入れたのです。
このダリック金貨の表面には、
弓と槍を持って走る王の全身像が打ち出されています。権威ある王は神の代理人であると共に、優れた戦士とされていました。コインには動きのあるペルシア王の姿が表現されたのです。
世界で初めて貨幣を発明したリディアのコインには、ライオンや雄牛などの動物が刻まれていましたが、アケメネス朝のコインは王の姿を表現させたことで、人類史上初めて「人物像」を貨幣に刻んだ国といえます。つまりこのタイプのコインは、歴史上最初の「人間の姿を表現したコイン」とされるのです。