ローマ帝国統治下のユダヤ属州で勃発した叛乱「ユダヤ戦争(=第一次ユダヤ戦争)」の際に発行されたプルタ銅貨。このコインは叛乱を指揮したユダヤ人勢力によって発行されました。
1世紀当時、イェルサレムをはじめとするユダヤ属州はローマ帝国によって統治されていました。しかし一神教を奉ずるユダヤ人社会を統治することは難しく、度々叛乱が勃発しました。特に大きかった叛乱が、ネロ帝治世のAD66年からはじまった「ユダヤ戦争」です。
ローマ軍によるイェルサレム包囲戦 聖都イェルサレムでの暴動を契機に始まった叛乱は7年にも及び、ユダヤ人の過激派や原理主義者を巻き込みながらユダヤ属州全体に広がりました。ローマからは、後に皇帝となるウェスパシアヌスとその息子ティトゥスが派遣され、叛乱軍の鎮圧にあたりました。
ユダヤの叛乱軍はイェルサレムを拠点として立て篭もり、ローマ軍に必死に抵抗しましたが、AD70年にはティトゥス率いる大軍に包囲され、ついに陥落します。イェルサレムに入城したティトゥス軍は街内を徹底的に破壊、略奪し、イェルサレムの大神殿も破壊されました。この破壊の際、焼け落ちた神殿で唯一残された壁の一部が、現在ユダヤ教の聖地となった
「嘆きの壁」です。
イェルサレムの陥落 このコインは、当時ユダヤの一般民衆が用いていた最小額単位「プルタ」で造られています。ユダヤの叛乱軍が統治した、イェルサレム市内をはじめとする地域で流通したとみられています。
表面の
アンフォーラ壺の周囲に刻まれたヘブライ文字は「3年」を意味し、蜂起から3年目(=AD68年~AD69年)に発行されたことを示しています。裏面の葡萄の葉の周囲には、同じくヘブライ文字によって
「シオンの自由」を意味する銘文が刻まれています。
2000年前のユダヤ人が辿った苦難の時代を物語る、小さいながらも価値ある歴史的古代コイン。