カラカラ帝の治世にアカエア属州(現在のギリシャ)の都市パトラエで発行された銅貨。ローマ帝国属州時代のギリシャでありながら、そのモティーフはローマらしさが溢れ出ています。
裏面には、ローマ建国神話に登場する重要な一場面、
幼きロムルスとレムスに乳を与える雌狼が表現されています。テヴェレ川から流れ着いた幼い双子を助けたのは一匹の雌狼でした。古代ローマでは雌狼を「ルパ」と呼んでいましたが、いつしかローマ人にとって雌狼(ルパ)といえば、最も知られた神話に登場する雌狼を指すようになりました。
この有名なモティーフはローマ本国をはじめ、帝政時代は属州で発行されたコインにも盛んに採用されました。ローマ本国から遠く離れた地域であっても、ローマ帝国の支配力を誇示する必要があったのかもしれません。特に小アジア西部の都市で発行された銅貨の裏面には、このモティーフを取り入れたものが多く発見・確認されています。