古代ローマ帝国の最盛期、トラヤヌス帝の治世に造られたアウレウス金貨。当時のアウレウス金貨はローマ帝国における最高価値の通貨であり、手にする人々は貴族や資産家、高級軍人などに限られていました。
こうした金貨は、ローマ帝国への納税や皇帝への献納、個人や国家の蓄財、公共事業の出費を賄うために使用されたと考えられています。古代ローマのごく限られた上流階級しかお目にかかることの出来なかった、特別な金貨です。
五賢帝の一人に数えられている
トラヤヌス帝は、積極的な対外政策によって領土を拡大させた皇帝でした。ダキア征服やアラビア遠征を行ったトラヤヌス帝は内政にも優れた手腕を発揮し、当時の元老院からは「至高の君主」の尊称号を贈られました。彼の治世中に帝国の版図は史上最大になり、古代ローマ帝国の最盛期として記録されています。
大ローマ帝国の版図 (AD117年 トラヤヌス帝治世末) 金貨の表面にはトラヤヌス帝(在位:AD98年~AD117年)の胸像が打ち出されています。月桂冠を戴くトラヤヌス帝の周囲部には
「IMP. TRAIANO. OPTIMO AVG GER DAC P M TR P (最高司令官 トラヤヌス 至高の皇帝 ゲルマニア征服将軍にしてダキア征服将軍 大神祇官にして護民官特権の保持者)」の尊称号銘が刻まれています。
裏面には最高神ジュピター(ユーピテル)の立像が表現されています。傍らには小さなトラヤヌス帝の立像も刻まれています。周囲にはトラヤヌス帝を示す
「COS. VI. P. P. S. P. Q. R (執政官6回目の国父 元老院とローマ市民)」の尊称号銘が刻まれています。