☆ローマ帝国第三代皇帝 カリグラ (カリギュラ)の治世に発行されたデナリウス銀貨。

☆歴史に悪名高い、暴君カリグラの姿を刻んだ希少なコイン。若きカリグラ帝の憂いに満ちた表情を、写実的に表現しています。

☆カリグラが暗殺された後、その悪名高さから多くの記録が抹消され、コインもその対象となったことから、ローマコインの中でも特に現存が貴重なコインです。

☆初代皇帝アウグストゥスを裏面に表現し、カリグラ自身と神君アウグストゥスの関係を強調した、政治的野心にあふれた一枚。神格化されたアウグストゥスは光の冠を戴き、左右には光り輝く星が表現されています。

☆両面の肖像をはじめ、コイン本体の保存状態は非常に良く、この時代のコインとしては入手困難なグレードです。

　　　

　　　 　　　　　　　　　　　　　　若きカリグラ像と皇帝カリグラ像

　カリグラ帝(在位:AD37年～AD41年)は第二代皇帝ティベリウスの後継となった若き皇帝であり、即位時は24歳でした。当初、ローマ市民を喜ばせるための催し物を開いたり、ティベリウス帝時代の政治犯に恩赦を与えるなどの施策を行い、人気を集めました。しかし治世開始すぐに大病に倒れ、生死の境を彷徨った末に回復した後から、カリグラの言動や性格に異常が見られるようになったと云われます。

　自らを神として崇めるよう命じ、壮大な建築物や催し物を次々と行うようになります。また自身に反発する元老院議員や富豪を粛清してその資産を奪うなどの残虐な面も顕わになり、やがて政治にも関心を示さなくなりました。アウグストゥス帝、ティベリウス帝の時代に蓄財された帝国資産は、彼の短い治世の間に多くが浪費され、ローマの財政を圧迫しました。
　AD41年にカリグラ帝は親衛隊によって暗殺され、わずか4年の治世に幕を下ろしました。彼はローマ帝国史上初めて暗殺された皇帝として名を刻みました。

　ユリウス=クラウディウス朝時代の皇帝は悪評が多く、ネロ帝は暴君の代表格にように語られますが、伝えられる実績や奇行、残虐性ではカリグラの方が遥かに上回るでしょう。数多くの逸話は後世に誇張されたものも多くありますが、在世中のカリグラが人格的に正常ではなかったという点は定説になっています。


　カリグラ帝の時代に造られたコインは種類が少なく、また暗殺後に暴君として様々な記録等が抹消されたため、コインもその対象になったとみられています。そのため、カリグラ帝のコインは総じて貴重とされ、また状態が良い物は稀です。

　このコインではカリグラ帝と初代皇帝アウグストゥス帝が表裏に刻まれています。カリグラ帝の鬱屈した表情が印象的な肖像です。　
　周囲部には一部が見切れていますが「C CAESAR AVG GERM P M TR POT COS (ガイウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス 大神祇官にして護民官特権を有する執政官)」の銘が刻まれています。
　「カリグラ」とは正式な名ではなく、幼少時代に履いていた「小さな軍靴」を意味する渾名です。