紀元前6世紀末、
古代オリエントを支配した大帝国 アケメネス朝ペルシアが発行したコイン。アケメネス朝はペルシアを中心に栄えた王朝であり、その版図は中央アジア~小アジア、メソポタミア、フェニキア、エジプトに至る広域なものでした。
特にこのコインが造られた時期は
ダレイオス1世(在位:BC522年~BC486年)の治世下にあたり、アケメネス朝の最盛期として知られます。ダレイオス1世は新都ペルセポリスを建設し、ギリシャ遠征にはじまる「ペルシア戦争」をはじめたことで有名ですが、広大な国内の統一化を図るために金貨・銀貨による貨幣統一と、税制の整備を推進しました。
アケメネス朝の宮殿 (想像図) このシグロス銀貨は、アケメネス朝が征服した小アジアのリディア地方で造られたものです。かつてリディア王国は世界史上初めて「コイン」を発明した国とされ、貨幣経済によって大いに栄えました。アケメネス朝はリディア王国を攻め滅ぼしましたが、優れた貨幣製造技術はそのまま取り入れ、引き続きコインを発行しました。
同コインには、
弓を引くペルシア王の全身像が表現されています。通常、弓や槍を持って走る姿が一般的ですが、初期のタイプでは弓を射る姿で表されました。冠を戴く王は背中に矢筒を背負い、右方向に向かって弓を構えています。ひざまずく王の衣からは素足が顕わになっています。
従来リディアで造られていたコインには、ライオンや牛など、動物が主なモティーフになっていました。そのため、アケメネス朝で発行されたこのコインは
「人物像を表現した最初のコイン」と考えられています。
オリエント世界を統一し、栄華を極めた古代大帝国のコイン。考古学的にも大変貴重な品です。