商品説明
紀元前3世紀、アンティゴノス朝時代の古代マケドニア王国で発行されたテトラドラクマ銀貨。このコインはアンティゴノス3世ドーソン王の治世下、港湾都市アンフィポリスで造られたとみられています。アンティゴノス3世とセレウコス朝シリアの連合軍が、アンドロス島沖での海戦でプトレマイオス朝エジプトの艦隊を打ち破った記念に造られたと云われます。
表面には海の大神ポセイドンが表現されています。威厳に満ち溢れたその表情は、天界の大神ゼウスの兄にふさわしいものです。頭部には海草のリースを戴く堂々とした風格です。全体にかかった美しいトーン(経年黒色)が、その威厳をよりいっそう引き立てています。
裏面にはガレー船の舳先に座る光明の美男神 アポロが表現されています。裸のアポロ神は、しなやかな肢体で船に寄りかかり、脚を交差させた優雅な姿で刻まれています。アポロ神は芸術的才能、音楽、牧畜を守護する神であると共に、弓の名手としても知られました。右手には弓が握られており、その特性が表されています。細かく観察すれば、アポロ神の外見的特徴である「カールさせた長い後ろ髪」や、顔つきまでしっかりと刻まれており、コインの芸術性の高さ、保存状態の良さが窺えます。
アポロ神が腰掛けるガレー船の船体横部分には、陰刻部分に古代ギリシャ文字による「ΒΑΣΙΛΕΩΣ」の銘、下部の陽刻部分に「ΑΝΤΙΓΟΝΟΥ」の銘が刻まれており、合せて発行者を示す「王たるアンティゴノス」を表しています。
裸のアポロ神坐像は、セレウコス朝シリアのコイン裏面に多く用いられたモティーフでした。その為、アンティゴノス3世とセレウコス朝の象徴を組み合わせたこのデザインは、両者の同盟関係を示しているのです。